今まで旅先で出会った人の中で、一番オモロくて明るくて変な男の話です。
カミーノで笑い続ける
ベルギーからやってきたスタンは、身長が190cmくらいあって馬鹿でかくて、ドレッドヘアでどこにいても目立つ人。
あと、大きい声で笑うので、座ってても姿が見えなくても目立ちます。
昨年のカミーノで、彼は、イタリアン軍団に一人混ざって、イタリア風のなまりを駆使した英語を使い続け(全くイタリア語を話せていない)、
「ボナペティ!」をイタリア人よりイタリア人ぽくジェスチャー付きで言えていました。
私を見たら「ドウシタノ?」と言って合掌をしてくる、間違った日本人の挨拶のモノマネも得意です。(間違っていることを分かってやっている確信犯です。)
しんどい山道も大雨の日もいつでもふざけているスタン。
豪雨がカッパに当たる音を
「Music!なんてロックなビート!」
と言って喜ぶし、
疲れ果てて宿に辿り着いたペレグリーノに「FULL!(満室やで!)」と手でバツを作って、困らせたりする。
洋服の洗濯は、服を着てシャワーを浴びながら体もろとも服を洗濯している。
ブルゴスやレオンの大聖堂には全く見向きもしない。理由を聞くと、「入場料を取るなんてfuckだ。ベルギーのゲントは無料で壮大な大聖堂に入れるのに。」と、自分の町の素晴らしさを写真を見せながら語ってくれる。
「お金がないし」と言って、あまり食事をせず、ビールと赤ワインとポテトフライ(ベルギー人らしい)だけで栄養をとっているような男でした。
エリザベスとはしゃぐスタン
はじまりはいつも雨
スタンといる時は大体大雨。
1日歩き終わって、観光でもしようかと思うと土砂降り。
仕方なくバルに入るとスタンがいて、もしくは後からスタンがやってきて、ダラダラと一緒に過ごすパターン。
「雨、止まないね」
「雨強まってきたね」
「あの人、ずぶ濡れやな、くくく…笑」などなど窓の外を見ながら一緒に観察。
人間観察、ペレグリーノ観察が好きな私たちは、
「あの人のいびき、昨日凄かったで」
「あの人のジャケットいいな」
「あの人、あの子と別れたんかな?」(カミーノで付き合い始めたカップルが中にはいます。途中でパートナーが変わる場合もあり)など言いながら。
せっかくの都会レオンでも大雨で、
「どこも行けないね」と言いながら、何杯も飲んで(私は緑茶「テ・ベルデ」を挟む)ダラダラ過ごしました。
スタンは、ただの人間観察好きではなく、色んな人と楽しくコミュニケーションをとるので、みんな彼が大好きで寄ってくる。
おばさんでもおじいさんでも。
寄ってくる人たちに、
「右足、良くなった?」
「靴、新しいの買えた?」と聞いたりして、色んな人のことを分かっているスタン。
人たらしです。
たまたま彼は、私の今の仕事と同じ仕事をベルギーでしていたので、仕事の話も時々話しました。「仕事でも、人を笑顔にさせることは自分も笑顔になる」なんて柄にもなく真面目なことを言う男。
今は、仕事をやめてフォトグラファーをしながら旅しているとのこと。
どんな綺麗な風景を撮ってるのかなと思って、彼のカメラを見せてもらうと、風景よりも人の顔が多くてびっくり。
ペレグリーノの自然な表情をおさえていたり、面白い瞬間の顔をおさえていたりして、見てるだけで楽しくなる写真ばかり。
スタンにしか撮れない写真。
多分、人が好きなんやな、あいつは。
メグライアンとクラウディアシファーとブラピ(どこがやねんレベル高め)
カミーノの後…
そうそう、彼は車に住んでいます。
トレーラーハウスとまではいかないバンが彼の家。
カミーノを歩き終えたスタンは、フランスに停めておいてたバンに乗って、イタリアやスロベニアを車で旅してベルギーに帰って行きました。
それからまたアルプスに住み着き、この4月からまたカミーノの今度は北の道を歩くことにしたらしい。
北の道のカミーノは、私が歩くフランス人の道のルートと違って、アップダウンが激しく、足を痛めてビルバオで静養中と数日前に聞きつけたので、私は、予定を変更し、スタンに会いに行くことにしたのでした。
信じがたいけど彼の家…
ビルバオで再会。やはり笑える男。
またまた土砂降りの中、バルでスタンと再会。
昨年と同じパターンに2人して爆笑。
相変わらず、「ドウシタノ?!」と言って合掌してるし。
昨年のカミーノで、当初から気に入っていたオーストラリア人のエリザベスに、木っ端みじんにフラれた話をしてくれて爆笑。
色んな自虐エピソードで笑わせてくれるスタン。
エリザベスの捨て台詞「家のない男とは付き合えない」って正論だと思ったけどね、かわいそうに。
そんな無茶苦茶な生き方の彼ですが、フィリピンの支援活動をしたり、EUの難民支援の活動をしたり、なかなか熱い男。
初めて話した時、お互いにこれまでの自分の生き方の話をして、「Selfish!(わがまま野郎)」と言ってお互いに笑い合ったのが始まり。何だか初めて話した時から、相棒な気がしたのでした。
だけど、私もスタンも、お互いが、ただわがままに生きているだけじゃないことを分かっている。
とにかくいいヤツ。
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