アラフォー女バックパッカーの無敵の旅の話

働きながら、少ない給料と有給休暇をフルに使って旅をしている勝手気ままな女の旅の話。旅で撮った写真もはさみつ

カミーノで知り合った旅人の話。〜韓国ののび太くんの話〜

先週末、のび太くんが大阪に来ました。

のび太くんとは、私が勝手に彼につけたあだ名で、本名はチョーくんといいます。昨年のスペイン、カミーノで知り合いました。

のび太くんについてご紹介しようと思います。

2016年のカミーノ巡礼中。灼熱のメセタで出会う。

昨年のカミーノでのこと。いつも、ゆっくりゆっくり歩いている私。比較的元気な午前中は、追いついてきた仲良いメンバーと一緒に歩くこともありましたが、歩みの遅すぎる私にとって、ランチを終えた後は、灼熱の太陽と私しかいない気がしてくる孤独の時間です。

早朝や午前中の一人歩きはすごく気持ちいいのです。誰もまだ歩いていない暗い道を歩く感じ、涼しい日陰を、ポツポツと後ろからやってきた人に追いつかれて、少し喋って、見送って、を繰り返し1人で歩いていてもワクワクする感じ。1人だけど1人じゃないと思える時間なのです。

しかし、それも昼ごはんを終えると、追い抜いてくる人もほぼいなくなり(つまり、ほぼ全員に抜かれたような状態)、疲れと暑さもピークになり、誰に追いつくこともなく、抜かれることもなく続く時間はキツイです。

昨年のメセタの区間は特にきつかった。メセタとは、スペインの台地で、遮る木も何もない、ひたすらひなたがまっすぐ続く、代わり映えのしない道。そこをフラフラになりながら進んでいた時のこと。ブルゴスを超えて、オンタナスという街に向かう途中のメセタで、とても美しい風景が広がり、立ち止まって写真を撮りました。その写真がこちら。

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北海道みたい…

と私が心で呟いていたら、斜め後ろから

「Like a Hokkaido…」という、

疲れ果てながらも絞り出すような男の子の声がしました。

それがのび太くんとの出会いです。

のび太くんもフラフラの歩き方。初めて私と同じか私より少し遅いスピードの人に出会いました。のび太くんは、足を引きずっており、ゆっくりマイペースに歩いていました。

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メセタを歩くのび太くん。この写真を写真立てに入れて、のび太くんにプレゼントしたらとても喜んでくれました。

韓国から来たのび太くん。

のび太くんは、韓国人で、英語を話すのですが、独特のクセのある発音で、聞き取るのが難しい英語でした。のび太くんは、人懐こい子で私に色々話しかけてきました。

最初は、

正直に言うと、疲れもピーク、汗が止まらない灼熱の中、荷物も肩に食い込み、足も痛くて、泣きたくなるくらいの状態だった私。

人懐こく、聞き取りにくい英語で色々日本のことを聞いてきたのび太くんにイラついていました。ごめん、のび太くん…。

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炎天下、7時間くらい歩いてまだこんな道が続く時。

人はやはり余裕を失う。

あと何km?

あと何分くらい?

ユーリはもう着いてるよね、

スタンはもうビールタイムかな?

私はみんなに追いつけるのかな…

とぐるぐる頭を回っている時に、無邪気に、「北海道の美瑛、富良野に行ったことがあるよ。ここは美瑛によく似ているね」

とニコニコ話すのび太くん。

私はぶっきらぼうに、「I think so...」くらいな返事。今思えば、すごいヤな女だったと思う。疲れは人に余裕も愛想も無くさせるんだなと自己嫌悪でした。

懲りないのび太くん。

その日から、疲れ切った14時過ぎになると、毎日のび太くんと道で出会って日本の話をされるという日々。

のび太くんは、本当に諦めません、私に対して。

疲れて怖い顔でうつむいて肩を落として歩く私に、気づかないのか、励ましているつもりなのか謎だけど、ずっと話し続けます。

日本を旅したことのあるのび太くんは、沖縄、竹富島などの八重山諸島の話、大阪の話、北海道の話など日本を旅して綺麗だったこと、優しくしてもらったことなどを話し続けます。

歩き終えたバルでなら、もっと楽しく聞けたのに、いつも最悪の状況で聞かされます。

一歩一歩、歩きながら、

「I like たこ焼き」

「I likeお好み焼き」

「I like カツ丼」と楽しそうに私に言ってくるので、

思わず、

「もう、それ以上言わんといて!

カツ丼食べたくなるやんか!

I miss カツ丼。

ドント・セイ・カツ丼・エニモア!!!

今、私疲れてるねん。

1人にしてお願い!」と、

とうとうキツめに怒って言ってしまいました。

 

するとのび太くんは、

「I miss キムチ……」

弱々しく悲しそうにつぶやいて沈黙。

こっちも何となく笑けてきて、

「もー!I miss ラーメン」と私も言い、

「イエス!金龍ラーメン!

I miss サムギョプサル」と笑顔の戻ったのび太くんが応える。

恋しい食べ物をお互いに言い続けて歩くという謎のやりとりで、仲直りし、前へと一緒に進みました。ソフトクリームがとにかくのび太くんは好きなようで、リピートしておられました。

頑張れよ、のび太くん。

私が帰国する前夜、アストルガで、のび太くんと初めて同じ部屋のアルベルゲになりました。のび太くんは、寝床作りもどんくさくて、着替えも遅くて、のんびりしています。

私は、痛めた足に塗るボルタレンクリームがたくさん残っていたので、足を痛めているのび太くんに全部あげました。どうしても足が痛かったら痛み止めも飲むように伝え、

「テーピングをするとかサポーターを巻くとか、工夫しないとあと250km歩けないよ」と忠告。のび太くんはボルタレンクリームをとても喜んでくれ、かわりにパンダの絵の入ったノートを私にくれました。何このノート…と笑いつつも、ありがとねーと言って翌朝お別れしました。

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大阪に来たのび太くん

そのあと、無事に800km歩き通し、ポルトやバルセロナ、パリを旅して、今は中国の大手会社アリババで働いているのび太くん。歩いている時も就職は決まっていて「アリババが僕を必要としている」(脳内直訳)なんて生意気な事を言っていましたが、ちゃんと中国語を駆使して杭州で働いているようです。

アリババの仕事仲間と大阪に来ることになり、私にも先週会いに来てくれました。

ミナミの金龍ラーメンから徒歩3分の距離に泊まって朝食に金龍ラーメンを食べて来たのび太くんでしたが、ランチはやっぱりこれやな!と言って2人で思い出のカツ丼を食べました。

メセタでのカツ丼の思い出話をしながら、大阪で2人で一緒にカツ丼を食べる日が来るとは。

二軒目はもちろんソフトクリーム。ミルクの旅で、ソフトクリームののったパフェを食べて、お互いのカミーノの話、出会った仲間の話、これからの旅の話などをひどい英語で語り合いました。のび太くんは今年の9月にスペインにまた渡り、スペイン人の巡礼仲間と再会するらしいです。

律儀に、ボルタレンクリームを私からもらったという恩を忘れずにいてくれていて、そのお礼にフラワーティーを瓶4本分も持って来てくれていました。

こんな大きな瓶を4つも、重かったやろうに…と思うと、のび太くんの優しさに何だか嬉しくて胸がいっぱいになりました。

自分のリュックから瓶4本も抜いたため、リュックの中がスカスカになって、リュックのチャックを閉め忘れて、梅田の地下街にリュックの中身を落としまくるという大失態を最後にやらかしたのび太くん。それでもニコニコしてるから、ほんまに癒し系やわこの子…と感心しました。

次は杭州で会おう!と約束して解散。

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その後、私と妹と2人でミナミの街をぶらついていたら、道頓堀クルーズの船に乗ったのび太くんを橋の上から発見。

「チョーくん!!」と叫んで呼びかけ、のび太くんことチョーくんが、「あー!!」と言って見上げたのが今回最後のお別れ。

カミーノで知り合った巡礼仲間とは、今も繋がっていて、またいつかどこかで会える存在やなと、何となく道頓堀クルーズを見送りながら思った夜でした。

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意外と洒落たものをくれたのび太くん。ありがと。

www.ararechantravel.com

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