今週のお題「読書の秋」
前回、私の大好きな作家益田ミリ先生をご紹介したのですが、割と反響があり、嬉しいです!
それで、本棚の中から読み散らかしたミリ作品の中で、今の私の気分にマッチしたものがあったので、それもご紹介します。
その名の通り「週末、森で」
この物語は、35歳の森に住む早川さんと街で働くマユミちゃんとせっちゃんの話です。
在宅でPCに向かって翻訳の仕事をしているらしい早川さんは、強い意志の元ではなく、何となく「田舎で暮らそう」と思って都会を離れて田舎で暮らし始めるのですが、田舎と言っても森の中ではなく、田舎の駅の駅前すぐ。マユミちゃんたちに、田舎で暮らすなら自給自足しろよと言われがちなんですが、野菜などは配達でお取り寄せしちゃうちゃっかりさ。
マユミちゃんは出版社で経理の仕事を14年間していて、せっちゃんは旅行代理店で接客の仕事で「定年まで、もう働くつもりなんだろ」と露骨にいやみを言われるストレスと戦いながら働いています。
そんな二人が、週末に早川さんちにかわりがわり泊まりに来ては(時々は2人一緒に)、東京のデパ地下などにある有名なお菓子などを必ず手土産にして、都会で日々感じているやるせなさやストレスを田舎で開放しています。
早川さんがのらりくらりとしながらも田舎での生活になじんでおり、大体泊まった次の日の朝に近くの森に散歩に行き、森が教えてくれることを、マユミちゃんとせっちゃんは東京に持って帰って生活の合間に思い出して生活するというシンプルな話。
私のオススメポイント
主人公の早川さんがとても自由なところがいい
田舎に住むけど、「田舎に住むからには野菜を育てなければ」と自分を縛らないところとか、東京に帰りたくなったときに連れて帰れないと困るから猫を飼わないでいるとか。また、田舎での付き合いも大切にしつつ、中学生に英語を教えたり、着付け教室をしたりしながら生活費を稼ぐたくましさとか。
都会の二人がもがいているところに共感
まあ、早川さんが、森のこと、植物のことに詳しすぎるっていうのがじゃっかん現実離れしている(都会人には考えられないだけで普通のことなのかもしれません)ところには目をつぶるとして、都会の二人の職場でのストレスが、「分かるよ…。」と共感できるし、森で浄化されたり、後で森でのことを思い出して何とか自分でもがいて対処しようとする二人が好きです。
早川さんの教えてくれる教訓
友達を大切にすることが自分の負担になるような「大切」はちょっとウソ
友達がはるばる来ていても、「夕方まで仕事するから」と言って「どうぞー」と言って友達の方も自由に過ごすという、互いに認め合える関係性とかが素敵。
目的地に行くだけのために人間って歩くわけじゃない。
確かにそうだなと思える余裕を持ちたいです。
ブナはやわらかいから建材には向かない。けど寒さにはめっぽう強い。やわらかくて柔軟性のある木は雪にも負けないんだね。
まずはマッサージに行って体をほぐすせっちゃんが笑けるんですが、職場で思い出して、ストレスで折れないようにやわらかく…を心がけるせっちゃん。
暗がりの中では真下より少し先を見つつ進むの。見えなくても隣にいるよ。
夜の森を歩いていてヘッドライトの照らし方をレクチャーする早川さん。
35歳になってもまだまだ初体験あるね~
手元ばっかり見ないで自分が行きたい場所を見ながらこぐと近づけるよ
よけられないって思ったら寄り添う手段もあるんだよ
カヤックの乗り方を二人にアドバイスする早川さん。カヤックをめいいっぱい楽しんだあと、東京に帰りそれぞれ仕事をするマユミちゃんとせっちゃんが思い出して力をもらったり、自分なりに解釈してやり過ごす姿がステキ。
などなど、書き出すと、全部書き出してしまってこの本を読む人が減っちゃいそうな気もするのでこの辺で。とにかく早川さんが何気なくさりげなく口にする名言が沁みます。
「森の中ってなつかしい匂いがする」
ずっと都会暮らしなのに「なつかしい気持ちってどこから来るんだろう?」
「わかんないけどなつかしくなるのっていい気分だよね~」
「今日のこの日もいつかなつかしがろう」
というところを読むと、早川さんという師匠が森にいる気がして、無性に森に行きたくなる私。
元森ガールや旅好きの人に声を大にしておすすめしたいマンガです。
続編はこちら↓↓「きみの隣りで」
なんと早川さんに信じられない変化が起こっています。